楽器とデジタル機材

電子ピアノのトリプルセンサー:連打と繊細なタッチを生む内部構造

テンポが上がると、右手の同音連打だけが少し遅れてしまう。左手でコードを押さえ直した瞬間、前の音が不自然に途切れる。ジャズピアノを弾いていると、こうした小さな違和感がフレーズ全体の流れを止めることがありますよね。…

電子ピアノのトリプルセンサー:連打と繊細なタッチを生む内部構造

その原因は、指の速さや練習量だけとは限りません。電子ピアノの鍵盤が、次の打鍵をどのタイミングで検知できるか。そこには、鍵盤の下に配置されたセンサーの数と位置が関わっています。

電子ピアノの「トリプルセンサー」や「3センサー」は、鍵盤の動きを3つの接点で読み取る仕組みです。鍵盤を完全に戻しきらなくても、次の音を発音しやすくなるため、同音連打やトリル、細かな装飾音で差が出ます。

ただし、3センサーなら何でもアコースティックピアノと同じになるわけではありません。支点長、鍵盤の重さ、ハンマーアクション、音源の反応など、演奏感を決める要素はいくつもあります。今日はその中で、電子ピアノの鍵盤センサーが何をしているのか、ジャズピアノの視点から順番に見ていきましょう。

鍵盤の音量は、センサーが押された時間差から決まる

電子ピアノの鍵盤を押すと、内部では単純に「押した」「離した」だけを見ているわけではありません。鍵盤の下には、高さの異なる複数の接点が配置されていて、鍵盤がそれぞれの接点を通過する時間差を読み取ります。

この時間差から、鍵盤がどれくらいの速さで動いたかを計算し、その結果が音量や強弱に変換されます。

ゆっくり鍵盤を押せば、接点を通過するまでの時間が長くなり、柔らかな音になります。素早く押し込めば時間差が短くなり、強い音として発音される。演奏者が指先で作った運動を、電子ピアノが数値に置き換えているわけですね。

一般的には、鍵盤下にシリコンラバースイッチなどの接点が置かれます。機種によって検出方式や構造は異なりますが、すべての電子ピアノが3個の独立した光学センサーを使っている、という意味ではありません。3つの高さに配置された接点で鍵盤の動きを検出するタイプも多くあります。

ここで、2センサーと3センサーの違いを簡単に整理してみましょう。

項目2センサー3センサー
主な検出押し込み時と戻り時の2点押し込み・中間・戻りの3点
強弱の検出2点間の時間差を利用3点間の時間差を利用
同音連打一定位置まで鍵盤を戻す必要がある鍵盤を戻しきらなくても再発音しやすい
トリルや装飾音速い動きで制限を感じることがある細かな再発音に対応しやすい
採用される傾向入門・エントリー価格帯に多い中級〜上級モデルに多い
演奏感への影響基礎練習や通常の演奏には対応連打性や細かなニュアンスで有利

2センサーでも、和音を弾いたり、バラードを演奏したりするだけなら、すぐに大きな不足を感じるとは限りません。私自身、センサーの数だけを見て機材の良し悪しを決めるのは少し早いと思っています。

けれど、ジャズのように同じ音を短い間隔で繰り返したり、装飾音を混ぜながらフレーズを前へ進めたりする音楽では、鍵盤がどの位置で次の打鍵を受け付けるかが、演奏の自由度に直結します。

2センサーでは、鍵盤が戻るまで待つ場面がある

同じ音を連続して鳴らす「同音連打」を考えてみましょう。

たとえば、右手の中指で同じ音を2回、素早く弾くとします。最初の打鍵で鍵盤は下がり、音が鳴ります。そのあと指を少し持ち上げて、もう一度押し込む。このとき、鍵盤がどこまで戻っているかが問題になります。

2センサーの構造では、鍵盤が一定の位置まで戻らないと、次の打鍵を新しい発音として処理できない場合があります。鍵盤を浅く戻しただけでは、電子ピアノ側から見ると、まだ前の打鍵が終わっていない状態に近いのですね。

そのため、演奏者は無意識に次のどちらかを行います。

  • 鍵盤が戻るまで指を待つ
  • 次の音が間に合うように、指を高く持ち上げる

前者ではテンポに遅れが出やすく、後者では指の動きが大きくなります。指の腹を鍵盤に近づけたまま、力を抜いて小さく連打したい場面で、動作が少し窮屈になることがあります。

特にジャズピアノでは、同音連打を単独で使うとは限りません。右手のメロディに短い装飾音を加えたり、ブルーノートのように隣接音を素早く揺らしたり、左手のコンピングで同じ音域を細かく刻んだりします。譜面上では小さな音符でも、演奏中は曲の呼吸を決める動きです。

このわずかな待ち時間が、フレーズの中で目立つことがあります。

連打の速さは、指の筋力だけでなく「鍵盤が次の音を受け付ける位置」にも左右されます。

もちろん、2センサーの電子ピアノで速いフレーズが弾けないという話ではありません。鍵盤をしっかり戻す奏法に慣れれば演奏できますし、音色やスピーカー、鍵盤の重さが自分に合っていれば、十分に音楽を楽しめます。

ただ、指の動きを小さく保ったまま、同音連打やトリルを自然につなげたい場合には、センサー構造の差が手元に現れます。

第3の接点が、鍵盤の途中の戻りを読み取る

トリプルセンサーでは、鍵盤の押し込みと戻りのあいだに、もう一つの検出点が加わります。メーカーによって呼び方は異なりますが、戻りの途中を検知する第3の接点、いわゆるダンパーセンサーが配置される構造です。

この接点があることで、鍵盤が完全に上まで戻っていない状態でも、次の打鍵を発音しやすくなります。

動きを順番に見てみましょう。

1. 指が鍵盤を押し始め、最初の接点を通過する

2. さらに鍵盤が下がり、次の接点を通過する

3. 鍵盤が戻る途中で、第3の接点が次の打鍵に必要な状態を検知する

4. 鍵盤が完全に戻りきる前でも、再び押し込めば発音できる

この仕組みは、グランドピアノの同音連打に近い自由度を目指したものです。アコースティックピアノでは、ハンマーが弦を打ったあと、鍵盤が完全に元の位置へ戻らなくても、再びハンマーを動かせる範囲があります。

電子ピアノの3センサーは、その物理的な動きをそのまま再現するものではありません。しかし、鍵盤を深く戻しきるまで待たなくても発音できるようにすることで、演奏者の指の動きを妨げにくくしています。

この差を感じやすいのは、次のような場面です。

  • 同じ音を短い間隔で繰り返すメロディ
  • 右手のトリルやターンなどの装飾音
  • ブルース系の短いグレースノート
  • 左手の低音を一定のリズムで刻むコンピング
  • テンポの速いビバップ系フレーズ
  • 音を切らずに重ねる反復パターン

鍵盤を浅い動きで扱えるからといって、いつでも軽く弾く必要はありません。むしろ、ゆっくりしたバラードでは、鍵盤の底まで押し込む深さや、指を離すタイミングのほうが表現に関わります。3センサーは、速い演奏だけに使う機能ではなく、指先の選択肢を増やすための構造と考えると分かりやすいですよ。

ジャズピアノで連打性が効く場所

ジャズピアノのフレーズは、音符が多いから難しいとは限りません。音と音の間隔、アクセントの置き方、音を残すか切るか、その細かな差が演奏の印象を変えます。

その中でトリプルセンサーが役立つのは、単に速い音符を弾く場面だけではありません。音のつながりを保ちながら、指の動きを整理できる点に価値があります。

右手のメロディで音の粒をそろえる

同じ音を繰り返すメロディでは、一音目だけ強くなったり、二音目が遅れて置かれたりすると、フレーズの輪郭が変わります。

たとえば、右手の薬指から中指へ受け渡すように同音を弾くとき、鍵盤の戻りを待つ時間があると、指の入れ替えが大きくなりやすいものです。手首が上下し、次の音に余計なアクセントがつくこともあります。

3センサーの鍵盤では、戻りの途中から次の発音へ移りやすいため、指の腹を鍵盤の近くに置いたまま、動きを小さく保てます。これは、派手な高速フレーズよりも、むしろゆっくりしたメロディの中で実感する人もいます。

音数を増やさず、同じ音を少しだけ揺らす。その繊細な表情が作りやすくなるのですね。

左手のコンピングでリズムを途切れさせない

左手のコード・コンピングでは、同じ音を連打するよりも、コードを短く切ってリズムに置くことがあります。ここで鍵盤の戻りが遅いと、次のコードを押さえる準備が間に合わず、リズムが後ろへ引っ張られることがあります。

特に、左手でテンションを含むボイシングを使いながら、右手でメロディを弾く場合、左手は大きく動けません。指を鍵盤から高く離さず、必要な音だけを短く発音したい。3センサーは、そのような省エネの動きと相性が良い構造です。

ただし、コンピングの切れ味はセンサーだけで決まりません。鍵盤の戻りの速さ、ハンマーアクションの抵抗、鍵盤表面の滑り具合、音源の余韻も関係します。センサーが3つでも、鍵盤の動きが重すぎたり、音の立ち上がりが遅かったりすれば、思ったようにリズムを置けないことがあります。

トリルと装飾音で呼吸を失わない

ジャズの装飾音は、クラシックの譜面どおりに均等に弾くものとは限りません。少し前に置いたり、メロディの後ろへ寄せたり、息を吸うように間を作ったりします。

この自由さを保つには、指が鍵盤の戻りに縛られないことが助けになります。

私は、速いフレーズで手が固まるとき、指をもっと速く動かそうとする前に、鍵盤からどれくらい離れているかを見るようにしています。指が高く上がりすぎていると、音を外しやすくなるだけでなく、次の打鍵までに余計な時間がかかります。

3センサー搭載機では、鍵盤の近くで小さく動く練習をしやすい。もちろん、機構が練習を代わりにしてくれるわけではありません。それでも、身体が本来作りたい動作を電子ピアノ側が受け止めてくれることは、長く弾く人ほど無視できない差になります。

センサーの数だけで鍵盤を選ばない理由

「トリプルセンサーなら上位機種」「2センサーなら初心者向け」と単純に分けたくなりますが、実際の弾き心地はもう少し複雑です。

鍵盤の演奏感に関わる主な要素を挙げると、次のようになります。

  • センサーが何点で鍵盤の動きを検知するか
  • 鍵盤の支点から指先までの距離がどれくらいあるか
  • 樹脂鍵盤か、木製・ハイブリッド構造か
  • ハンマーアクションの重さと戻り方
  • エスケープメントの感触を再現しているか
  • 鍵盤表面の滑りと摩擦
  • 音源が弱い打鍵から強い打鍵までどう反応するか
  • スピーカーやヘッドホンで音の立ち上がりを確認できるか

鍵盤の支点長、つまり鍵盤の奥にある支点から指で触れる位置までの距離も、弾き心地に影響します。支点から遠い位置を押すと重く感じ、奥のほうを押すと感触が変わる。アコースティックピアノに近い構造を目指す機種では、この距離や鍵盤の素材にも配慮されています。

そのため、3センサー搭載機でも、鍵盤の長さやアクションが自分の手に合わなければ、演奏しにくさが残ることがあります。逆に、2センサーでも、鍵盤の戻りや音源の反応が自然で、普段の演奏には十分使いやすい機種もあります。

トリプルセンサーは、鍵盤選びの中心になる要素の一つです。ただ、そこだけを見て決めると、実際に弾いたときの印象と仕様表の差に戸惑うかもしれません。

入門モデルと上位モデルで構造が変わる背景

一般的な入門・エントリー価格帯の電子ピアノでは、2センサーの樹脂鍵盤が多く採用されています。ヤマハのGHS鍵盤などが、その代表的な構成として知られています。

一方、中級から上級の電子ピアノやステージピアノでは、3センサー検知を採用するモデルが増えます。ヤマハのGH3鍵盤は第3のセンサーを搭載し、音切れを抑えた高速な同音連打やトリルへの対応をうたう構造です。ローランドでも、PHA-4やPHA-50など、モデルによって3センサー検知を採用する鍵盤があります。

ここで、価格差をセンサー一個分の違いとして考えないことが大切です。

上位機種では、センサー数に加えて、鍵盤そのものの長さや素材、ハンマーの動き、鍵盤の重さの配分、戻りの速さ、音源処理などがまとめて設計されています。3センサーは、その全体設計の中にある一つの部品です。

また、3センサーのメリットは演奏者のレベルによって現れ方が変わります。

まだコードを押さえることに集中している段階では、センサーの差よりも、正しい姿勢や指の独立、テンポを保つ練習のほうが効果を感じやすいでしょう。ところが、同じフレーズを何度も弾き、音の長さやアクセントを細かく調整し始めると、鍵盤の戻り方が気になってきます。

これは、初心者だから不要という話でもありません。最初から自分の動きに合う鍵盤を選べれば、無理に指を高く上げる癖をつけずに済む場合もあります。予算と設置環境が許すなら、長く続ける予定の人ほど、連打性を試しておく意味はありますよ。

ステージピアノでトリプルセンサーが生きる場面

自宅用の電子ピアノと、持ち運びを前提にしたステージピアノでは、選び方の軸が少し変わります。

ステージでは、音色を切り替えながら短いフレーズを弾いたり、バンドの中で左手のコードをリズムに合わせて置いたりします。客席や他の楽器の音があるため、ヘッドホンで一人で弾くときよりも、発音の輪郭とタイミングがはっきり出ます。

ここで連打性の高い鍵盤が助けになることがあります。

  • 右手で短いフレーズを反復しながら、左手でコードを切り替える
  • ベースやドラムに合わせて、左手のコードを細かく刻む
  • 音を伸ばしたまま、別の指で同音を重ねる
  • 音量を抑えたまま、装飾音だけを素早く入れる
  • ピアノ音色からエレクトリックピアノ音色へ切り替え、タッチの差を表現する

ただし、ステージピアノを選ぶときは、センサーだけでなく本体の重量、鍵盤の戻り、ペダル端子、外部音源との接続、スピーカーの有無も見ておきたいところです。

自宅で使う電子ピアノなら、弾いた音が部屋の中でどう聞こえるかが練習の継続に関わります。ステージピアノなら、会場の音響やアンプ、ミキサーを通したときの立ち上がりが気になります。

同じ3センサーでも、持ち運びやすさを優先した機種と、アコースティックピアノの重量感を優先した機種では、手に返ってくる感触が違います。あなたが求めているのが「高速連打のしやすさ」なのか、「木製鍵盤の沈み込み」なのか、それとも「ライブ中の音色切り替えと操作性」なのかを分けて考えてみましょう。

実際に試すなら、同音連打を短いパターンで弾く

店頭や試奏の機会があるなら、難しい曲を最初から弾く必要はありません。センサーの違いを見るには、短いパターンのほうが手の感覚を追いやすいものです。

1. 同じ音を弱く連打する

まず、右手の一本の指で同じ音をゆっくり繰り返します。音量をそろえようとせず、鍵盤を浅く戻したときに次の音がどう鳴るかを感じてみてください。

次に、少しずつ間隔を狭くします。音が途切れるか、次の音が遅れるか、指を高く持ち上げないと間に合わないかを確認します。

ここでは速さを競わなくて大丈夫です。大切なのは、鍵盤がどの位置で再発音を受け付けているように感じるかです。

2. 二つの音でトリルを弾く

隣り合う二つの音を、右手の2本の指で交互に弾きます。最初はゆっくり、次に少しだけ速くして、手首や前腕に余計な力が入らないか見ます。

トリプルセンサーの鍵盤では、鍵盤を深く押し直さなくても音が続きやすいため、指の腹を鍵盤の近くに置きやすくなります。ただし、機種によって戻りの感触は違います。音が鳴るかどうかだけでなく、指を離したときに鍵盤がどのくらいの速さで戻るかも感じてください。

3. 左手で短いコードを切る

左手で3音程度のコードを押さえ、短く離します。そのあと、同じコードを一定のリズムで繰り返します。

ここではセンサーの数と同時に、鍵盤の重さや戻り方を見ます。コードを切るたびに手首が跳ねるなら、鍵盤が自分のコンピングに合っていない可能性があります。

4. 強弱をつけて同音を弾く

同じ音を、弱く、少し強く、もう一度弱く弾きます。3センサーだから強弱表現が自動的に細かくなるわけではありませんが、鍵盤の検出が安定していれば、指の動きを小さくしたまま変化をつけやすくなります。

ここで音量だけを聴かず、音の立ち上がりと余韻も聴きましょう。ジャズでは、同じ音量でもアタックの角度が違うだけで、音の表情が変わります。

センサー数とタッチの重さは別の話

「3センサーだから鍵盤が重い」「2センサーだから軽い」と考えてしまう人がいますが、これは別の要素です。

センサー数は、鍵盤の動きをどの位置で検知するかに関わります。タッチの重さは、鍵盤のアクション、ハンマーの重量、ばねやゴム部品、鍵盤の長さなどから決まります。

3センサーの鍵盤でも軽いタッチのものはありますし、2センサーでもしっかりした抵抗感のある鍵盤はあります。

ジャズピアノでは、重い鍵盤が合う人もいれば、軽い鍵盤でリズムを細かく刻みたい人もいます。オスカー・ピーターソンのように強いアタックを軸にした演奏を思い浮かべる人と、ビル・エヴァンスのように音の余韻や内声の動きを大切にする人では、欲しい抵抗感が違って当然です。

ここで大切なのは、重さの数字だけに頼らないことです。同じ「重め」と表記された鍵盤でも、押し始めが重いのか、底まで押したときに重さが増すのか、戻りが速いのかで、指の疲れ方が変わります。

あなたが普段どの音域を弾くのかも関係します。左手の低音を強く押さえる人は、低音側の重さを気にするでしょう。右手の速いフレーズが中心なら、高音側の戻りや鍵盤の反応が気になるかもしれません。

3センサーのメリットを練習に生かす方法

トリプルセンサーの鍵盤を使うなら、機構の良さをただ速いフレーズに使うだけでなく、身体の無駄を減らす練習にもつなげてみましょう。

指を高く上げずに音をそろえる

まずは、鍵盤の上に指の腹を近づけたまま、同音をゆっくり弾きます。音が小さくても構いません。指を高く持ち上げないと音が鳴らない、という思い込みを少しずつ外していきます。

音が小さくなったとき、指先だけで押そうとすると力が固まりやすいので、手のひらや前腕の重さを軽く鍵盤へ預けるようにします。呼吸を止めないことも大切です。吸ったまま固まると、指が鍵盤から浮きやすくなります。

連打の前に、音の長さを決める

同音連打では、音を速く出すことばかりに集中しがちです。しかし、ジャズのフレーズでは、一音目をどれくらい残すかが二音目の印象を決めます。

同じ音を4回弾くなら、すべて同じ長さにする練習だけでなく、1回目を少し長く、2回目を短く、3回目をアクセントにする、といった変化をつけてみましょう。

3センサーは再発音を助けますが、音楽的な間合いを作るのは指と呼吸です。鍵盤が反応してくれるからこそ、音を詰め込まず、間を選べるようになります。

左手のコードを小さく切る

左手のコードは、最初から複雑なテンションをたくさん入れなくても大丈夫です。まずは3音のシンプルなボイシングで、短く押して離す動作を繰り返します。

鍵盤の戻りを待つのではなく、手の中で次の形を準備します。たとえば、コードを離す瞬間に指を全部持ち上げるのではなく、次に使う音の位置へ手を滑らせるように移動する。トリプルセンサーの連打性は、こうした小さな移動と相性が良いです。

慣れてきたら、3音のうち一音だけを残し、残りの音を切る練習もできます。音を残す指と離す指が分かれると、コンピングの表情が広がります。

電子ピアノを選ぶときの見方

仕様表で「3センサー」と確認できたら、そこで終わりにせず、次の情報を組み合わせて見ていきましょう。

  • 3センサーが全音域に搭載されているか
  • 鍵盤が樹脂、木製、ハイブリッドのどれにあたるか
  • ハンマーアクションの戻りが自分のテンポに合うか
  • エスケープメントの感触が強すぎないか
  • 低音と高音で鍵盤の重さがどう変わるか
  • ヘッドホン使用時に弱い音の立ち上がりを確認できるか
  • ステージで使うなら、本体重量と外部出力が現実的か
  • 自宅で使うなら、夜間の音量と設置スペースに無理がないか

自宅練習では、鍵盤の性能だけでなく、毎日触りたくなるかどうかが大きな意味を持ちます。防音室を用意できる人もいれば、夜はヘッドホンで練習する人もいるでしょう。譜面をiPadで表示するのか、紙の楽譜を置くのかによって、譜面台の使いやすさも変わります。

音源ソフトや外部の音源を使う場合は、MIDI接続の安定性や、鍵盤から送られるベロシティの扱いやすさも気になります。電子ピアノ本体の音に満足していても、制作環境へ広げるときに接続端子や設定が使いにくいことがあります。

逆に、外部音源を使わないなら、複雑な機能よりも、鍵盤の戻り、ペダルの感触、ヘッドホンでの音の聞こえ方を優先したほうが、日々の練習には合いやすいでしょう。

トリプルセンサーが必須になりやすい人、そうでない人

トリプルセンサーを選ぶ意味が大きいのは、次のような演奏をしたい人です。

  • ジャズの速い右手フレーズを練習している
  • 同音連打やトリルで鍵盤の戻りが気になる
  • 左手のコンピングを小さな動きで刻みたい
  • 鍵盤を浅く戻した状態から再発音したい
  • 将来的にセッションやライブで演奏したい
  • アコースティックピアノから電子ピアノへ移行する
  • 指を高く上げず、効率的なフォームを身につけたい

一方で、コード練習やゆっくりした曲の伴奏が中心なら、2センサーでも大きな問題にならないことがあります。予算を抑えながら、ペダルや音源、設置環境へ回すという考え方も自然です。

3センサーは、練習を楽にする魔法の機能ではありません。指が固まっていれば、どれだけ連打性の高い鍵盤でも音はそろいません。リズムを聴いていなければ、再発音が早くてもフレーズは前のめりになります。

ただ、練習で身につけたい動きを鍵盤側が邪魔しにくい、というのは確かな利点です。身体の使い方を整えながら、機材にも同じ方向を向いてもらう。そのくらいの距離感で考えると、トリプルセンサーの価値が見えやすくなります。

まとめ:連打の自由は、鍵盤の内部から始まっている

電子ピアノのトリプルセンサーは、鍵盤下の3つの接点で打鍵と戻りの動きを検出し、鍵盤を完全に戻しきらなくても次の音を発音しやすくする仕組みです。

2センサーでは、鍵盤が一定位置まで戻るのを待つ必要がある場面があります。3センサーでは、その途中を検知できるため、同音連打、トリル、装飾音、短いコンピングをより小さな指の動きで扱いやすくなります。

けれど、演奏感を決めるのはセンサーだけではありません。支点長、鍵盤の素材、ハンマーアクション、戻りの速さ、音源の反応、ペダルの感触まで含めて、あなたの手に合うかを見ていきたいところです。

試奏するときは、難しい曲を披露しなくても大丈夫です。同じ音を弱く連打し、二つの音でトリルを弾き、左手で短いコードを切る。それだけで、鍵盤の戻り方と自分の呼吸が合うかどうかは、かなり見えてきます。

速く弾けない日があっても、指の動きがぎこちない日があっても、それは失敗というより、手と鍵盤の距離を知る時間です。

まずはこの1小節だけで十分です。指の腹を鍵盤に近づけて、呼吸を止めずに、同じ音をゆっくり二度弾いてみましょう。そこから、あなたのジャズピアノの連打は少しずつ自由になっていきます。

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よくある質問

電子ピアノのトリプルセンサーとは何ですか?
鍵盤の押し込みと戻りの動きを、3つの接点で検出する仕組みです。鍵盤が完全に戻りきる前でも、次の打鍵を発音しやすくします。
2センサーと3センサーの違いは何ですか?
2センサーでは、鍵盤が一定の位置まで戻らないと次の打鍵を新しい発音として処理できない場合があります。3センサーでは戻りの途中を検知できるため、同音連打やトリルなどの再発音に対応しやすくなります。
トリプルセンサーはジャズピアノのどんな演奏に向いていますか?
同音連打、右手のトリルや装飾音、ブルース系のグレースノート、左手の短いコード・コンピングなどに向いています。鍵盤の近くで指を小さく動かしながら、フレーズをつなげやすくなります。
3センサーなら鍵盤は重くなりますか?
センサー数と鍵盤のタッチの重さは別の要素です。鍵盤の重さは、アクション、ハンマーの重量、ばねやゴム部品、鍵盤の長さなどによって変わります。
トリプルセンサーの電子ピアノはどう試奏すればよいですか?
同じ音を弱く連打し、二つの音でトリルを弾き、左手で短いコードを一定のリズムで繰り返します。音が途切れないかだけでなく、鍵盤の戻りの速さ、指を高く上げずに弾けるか、手首や前腕に余計な力が入らないかも確認します。

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