
たとえば、ハ長調の「ド・ミ・ソ・シ」を1オクターブ以内に収めれば、これはクローズドヴォイシングである。同じ構成音の一部を広い音域へ移せば、オープンヴォイシングになる。音名は変わらない。変化するのは、各音の距離と、音域に対する配置である。
ジャズピアノにおけるクローズドヴォイシングとオープンヴォイシングの違いは、優劣ではない。コード進行の速度、左手と右手の役割、ベース音の有無、テンションの位置、低音域の濁りをどう処理するかという配置上の問題である。
クローズドヴォイシングとオープンヴォイシングの定義
クローズドヴォイシングは、コード構成音の最低音から最高音までの音域差が1オクターブ以内に収まる配置である。構成音が密集するため、各音の関係を把握しやすい。4声体の和音であれば、4つの音が比較的近い位置に並ぶ。
一方、オープンヴォイシングは、最低音から最高音までの広がりが1オクターブを超える配置である。構成音の一部を別のオクターブへ移し、各声部の間隔を広げる。ピアノでは、左右の手に音を分散させる配置や、上から2番目の音を1オクターブ下げるドロップ2が代表例となる。
ここで定義を曖昧にしてはならない。クローズドかオープンかは、響きの印象ではなく、音域の幅によって分類される。
| 項目 | クローズドヴォイシング | オープンヴォイシング |
|---|---|---|
| 音域 | 最低音から最高音まで1オクターブ以内 | 最低音から最高音まで1オクターブ超 |
| 構成音の距離 | 密集している | 広い |
| 音の把握 | 各構成音を認識しやすい | 声部ごとの役割が明確になりやすい |
| 得意な場面 | 素早いコード移動、片手コンピング、密度のある伴奏 | ソロピアノ、広がりのある伴奏、低音域の濁りの回避 |
| 主な問題 | 低音域では濁りやすい | 手の移動と音域管理が必要 |
| 代表的な操作 | 転回、テンション追加、4声の密集 | ドロップ2、スプレッド配置、左右の分散 |
「オープンヴォイシングは常に豊かで、クローズドヴォイシングは常に狭い」という説明は正確ではない。高音域のクローズドヴォイシングは明瞭に響く。反対に、音を広げたオープンヴォイシングでも、低音域に不適切な音程を置けば濁る。
ヴォイシングの差は、コードネームの差ではない。同じ度数を、どの音域に、どの距離で配置するかの差である。
クローズドヴォイシングは何を分析するための配置か
クローズドヴォイシングの利点は、コードを構成する度数が近接しているため、和音の内部構造を視認しやすい点にある。
たとえば、Cメジャー7を根音から積む。
- 1度:C
- 3度:E
- 5度:G
- 7度:B
これは基本的なクローズド配置である。音域差は1オクターブ以内に収まる。転回すれば、最低音をE、G、Bへ移すこともできる。しかし、転回によってコードの機能が変わるわけではない。変化するのは最低音と各声部の距離である。
ジャズピアノの実用では、4音すべてを根音から積む形よりも、3度と7度を中心にした配置が重要になる。理由は、3度がメジャーかマイナーかを決定し、7度がコードの機能と進行方向を示すためである。
ハ長調におけるⅡ-Ⅴ-Ⅰを例にする。
- Dm7:3度はF、7度はC
- G7:3度はB、7度はF
- CM7:3度はE、7度はB
この進行では、Dm7の7度であるCが、G7の3度であるBへ半音下行する。Dm7の3度Fは、G7の7度Fとして共通音になる。その後、G7の3度BはCM7の3度Eへ、7度FはEへ進む。
このように、クローズドヴォイシングは「コードを鳴らす」ためだけの配置ではない。コード間の共通音と半音進行を確認するための分析単位である。
3度と7度を先に固定する
コードネームを見たとき、最初に5度やテンションを探す必要はない。まず3度と7度を固定する。
G7であれば、BとFである。ここに9度のA、13度のE、あるいはオルタードテンションのA♭、E♭、D♭などを加える。コードの機能を支える核は、3度と7度である。
ルートを含めたクローズド配置では、たとえば次のような形が成立する。
- G7:G–B–D–F
- G9:G–B–D–F–A
- G13:G–B–F–A–E
ただし、すべての構成音を入れればよいわけではない。5度は、3度と7度に比べて機能上の情報量が少ない。テンションを追加する場合、5度を省略して9度や13度を置くほうが、限られた音域で情報を確保しやすい。
ここで、クローズドヴォイシングの実用上の問題が発生する。低い音域にG–B–D–Fのような密集配置を置くと、各音の倍音が干渉し、音程の輪郭が不明瞭になる。構成音が正しくても、配置は正しくない。
低音域ではロー・インターバル・リミットが働く
低音域では、同じ音程でも高音域とは異なる結果になる。低いGと、そのすぐ上のBを鳴らす場合、長3度の関係は明確に聞こえるとは限らない。さらにD、Fを近接させると、和音全体が一つの塊になる。
この現象を整理するために用いられるのが、ロー・インターバル・リミットである。これは、低音域に置ける音程には、濁りを避けるための下限があるという考え方である。固定された単一の数値ではない。楽器の音色、音量、ペダル、録音環境、他の楽器との重なりによっても変化する。
しかし、原則は明確である。低音側ほど、近接した構成音を避ける。
低音域のクローズド配置が濁る理由
コード構成音の間隔を、単純化して比較する。
- 低音域の完全5度:比較的安定しやすい
- 低音域の長3度・短3度:音程は判別できるが、密集すると濁りやすい
- 低音域の短2度・長2度:強い摩擦が生じる
- 低音域で複数音を狭く積む配置:各声部の輪郭が消えやすい
特に、ルート、3度、7度、テンションをすべて左手で密集させると、コードの機能よりも低音の混濁が前面に出る。これは「ジャズらしくない」という感覚の問題ではない。周波数帯域に対して、音程配置が過密である。
したがって、左手のクローズドヴォイシングでは、音域を上げるか、構成音を減らすか、オープン配置へ移行する必要がある。
ルートを省略する場合
ベース奏者がルートを担当するアンサンブルでは、ピアノがルートを省略するルートレスヴォイシングが成立する。
左手の基本形として、Ⅱ-Ⅴ-Ⅰに次のような3度・7度中心の配置を置く。
- Dm7:F–C–E–A
- G7:F–B–E–A
- CM7:E–B–D–A
これは一例であり、唯一の正解ではない。重要なのは、各コードの3度・7度を中心に、9度や13度を加え、不要な5度やルートを削除している点である。
ただし、G7にAを加える場合、そのAは9度である。CM7にAを置く場合は13度、または6度として機能する。音名が同じでも、コード内の度数は変化する。コードネームだけでなく、度数によって読む必要がある。
ルートレスヴォイシングは、単にルートを抜いたクローズドヴォイシングではない。ベースとの役割分担を前提に、3度・7度・テンションの位置を再構成する技術である。
オープンヴォイシングは音域を分解する
オープンヴォイシングでは、和音を一つの塊として扱わない。低音、中音、高音を別の機能として配置する。
たとえば、CM7の構成音をクローズドに並べると、C–E–G–Bとなる。ここで上から2番目のGを1オクターブ下げると、G–C–E–Bになる。この操作がドロップ2である。
元の配置:
- 下から1番目:C
- 下から2番目:E
- 下から3番目:G
- 下から4番目:B
上から2番目のGを下げた配置:
- G–C–E–B
最低音から最高音までの幅は1オクターブを超える。構成音は同じである。変化したのは、Gと他の音の距離である。
この配置では、低音にGが置かれ、Cがその上に続く。ルートを最低音に置く形ではないため、コードの根音感は変化する。しかし、CM7の構成音としては同じであり、前後のコードとの声部進行を調整できる。
ドロップ2は機械的操作ではない
ドロップ2は、4声を広げるための手続きとして説明できる。しかし、すべてのコードで同じ音を機械的に下げればよいわけではない。
実際の配置では、次の条件が関係する。
- 最低音が他の楽器のベース音と衝突しないか
- 低音側に短2度や長2度が発生していないか
- 3度と7度が前後のコードで滑らかに進行しているか
- メロディー音がテンションとして機能しているか
- 左手の広がりが手の大きさに対して過剰でないか
- ペダルによって不要な音が残らないか
ドロップ2は、クローズドヴォイシングをオープンヴォイシングへ変換する方法の一つである。目的は変換そのものではない。声部の独立性と音域の分離を得ることである。
ジャズピアノではコード進行が配置を決める
同じコードでも、単独で鳴らす場合と進行の中で鳴らす場合では、最適なヴォイシングが異なる。
コード進行では、各声部がどこからどこへ進むかが問題になる。コード単体の完全な構成より、次のコードへどの音が移動するかを優先する。
Ⅱ-Ⅴ-Ⅰのクローズド配置
Dm7–G7–CM7を考える。
Dm7をF–A–C–Eとする。これは3度、5度、7度、9度の配置である。次のG7では、Fを共通音として残し、AをAまたはA♭へ、CをBまたはCへ、EをEへ進めることができる。
しかし、G7でAを9度として残すか、A♭を♭9として置くかによって、進行の性格は変わる。
- G7にA:9度。比較的開いた機能配置
- G7にA♭:♭9。Cへの解決圧が強い
- G7にA♭とE♭:♭9、♭13。オルタード系の摩擦が増える
- G7にA♭とD♭:♭9、♭5。トライトーン周辺の情報量が増える
その後、CM7へ進むと、G7のBはCM7の3度Eへ、FはEへ解決できる。オルタードテンションを含めた場合も、テンションをどの音へ半音または全音で解決させるかを確認する必要がある。
コードネームに「G7」と書かれていても、9度、♭9、♯9、♭5、♯5、13度の選択は一定ではない。曲のメロディー、前後のコード、ベースライン、ボイシングの音域によって変わる。
マイナーⅡ-Ⅴ-Ⅰの配置
短調のⅡ-Ⅴ-Ⅰでは、Dm7♭5–G7♭9–Cm7を例にする。
度数を整理すると、次のようになる。
- Dm7♭5:1、♭3、♭5、♭7
- G7♭9:1、3、5、♭7、♭9
- Cm7:1、♭3、5、♭7
Dm7♭5の構成音はD、F、A♭、Cである。G7♭9では、G、B、D、F、A♭となる。ここではDとF、A♭が複数の声部で共通または近接関係を作る。Cm7へ解決する際には、BがCまたはB♭へ進み、A♭がGまたはG♭へ動くなど、解決先を選択できる。
この進行で問題になるのは、♭9である。G7に対するA♭は、ルートGの半音上に位置する。低音域でGとA♭を同時に密集させれば濁りが生じる。したがって、Gをピアノ側で弾く必要がない場合、ルートをベースに任せ、A♭を中音域以上へ置くルートレス配置が有効になる。
マイナーⅡ-Ⅴ-Ⅰでオルタードテンションを選ぶ場合、次のように整理できる。
1. 解決先のコードトーンと半音関係を作る
G7の♭9であるA♭は、G♭、G、Aなど複数の進行先を持つ。解決方向を決めずに追加してはならない。
2. 3度と7度を残す
G7のBとFは、コードの機能を示す。テンションを増やしても、この2音の役割は消えない。
3. 低音域に♭9を置かない
ルートを含めた密集配置では、G–A♭の半音が低音側に発生する。ベースとの分担を定義する。
4. 解決後のCm7でテンションを再利用する
Cm7に対してDは9度、E♭は♭3、Aは13度である。同じ音名でも、解決後の度数を読み直す。
オルタードテンションは、音を増やすための装飾ではない。ドミナントからトニックへ向かう声部進行を設計するための材料である。
テンションは多いほど情報量が増える。しかし、情報量と機能性は同義ではない。解決先を持たないテンションは、単なる音数である。
クローズドヴォイシングとオープンヴォイシングの使い分け
ジャズ ヴォイシングの種類を選ぶとき、まず演奏形態を分ける必要がある。ソロピアノと、ベース付きのコンピングでは、必要な音域と構成が異なる。
片手コンピング
右手または左手だけでコードを処理する場合、クローズドヴォイシングが扱いやすい。4音前後を近い位置に置けるため、コード進行の反復が容易である。
ただし、左手の低音域で5音以上を密集させるのは避ける。3度・7度・テンションを中心に3〜4音へ整理する。
たとえば、ベースがルートを弾く場合、ピアノの左手は次のように構成できる。
- Dm7:F–C–E
- G7:F–B–E
- CM7:E–B–D
この形では、ルートを省略し、3度・7度・9度を中心にする。音域が低すぎる場合は、そのままオクターブ上へ移す。オープンに広げる前に、構成音を減らすことが先である。
ソロピアノ
ソロピアノでは、低音のルート、中音域の和声、高音域のメロディーを同時に処理する必要がある。ここでクローズドヴォイシングだけを使うと、両手が同じ音域に集まりやすい。
オープンヴォイシングでは、左手にルートまたは低音の骨格を置き、右手に3度、7度、テンション、メロディーを配置する。構成音の間隔が広がるため、低音の振動と高音の旋律が分離する。
ただし、広げればよいわけではない。左手の低音と右手の最低音の間隔が広すぎると、中音域の和声情報が欠落する。オープンヴォイシングには、広げる場所と残す場所の選択が必要である。
ベース付きアンサンブル
ベース奏者がいる場合、ピアノのルートは必須ではない。むしろ、ベースと同じルートを低音で重ねると、低音の情報が過密になる場合がある。
ベース付きアンサンブルでは、次の優先順位が成立する。
- 3度と7度でコード機能を明示する
- 9度、13度、必要なオルタードテンションを加える
- 5度とルートは状況に応じて省略する
- 低音域の密集を避ける
- 前後のコードで共通音と半音進行を維持する
この条件では、クローズド配置でもオープン配置でもよい。重要なのは、編成全体でどの音を誰が担当しているかである。
オープンヴォイシングのピアノ弾き方
オープンヴォイシングを練習する場合、コードネームを順番に覚えるだけでは足りない。まずクローズド配置を作り、各声部の移動を確認し、その後に音を広げる。
4声をドロップ2へ変換する手順
CM7を例にする。
1. ルートから3度、5度、7度を積む
C–E–G–Bとする。
2. 上から2番目の音を特定する
上から順にB、G、E、Cであるため、上から2番目はGになる。
3. Gを1オクターブ下げる
G–C–E–Bとなる。
4. 最低音と他の構成音の距離を確認する
GとCは完全4度、CとEは長3度、EとBは長6度である。
5. コード進行の中で前後関係を確認する
単独で成立しても、前後のコードで声部が跳躍すれば再配置する。
この手順は、メジャー7だけでなく、マイナー7、ドミナント7、マイナー7♭5にも適用できる。ただし、コードの転回形やメロディー音を含める場合、ドロップする音は変わる。
メロディーを最上声に置く場合
ジャズピアノのソロ演奏では、最上声がメロディーになる。したがって、理論上のドロップ2よりも、メロディーの位置が優先される。
CM7でメロディーがD、つまり9度にある場合、最上声はDで固定する。その下にE、B、Gなどを配置する。Dを単純にコード構成音の最上位へ置くのではなく、3度・7度との距離を調整する。
たとえば、右手をB–D–E、左手をG–Cとする配置では、CM7の7度、9度、3度、5度、ルートが分散される。これは厳密な意味でのクローズド配置ではない。複数の音域にコード機能を分解したオープン配置である。
ここで、メロディーがコードトーンかテンションかを判定する。
- CM7上のC:1度
- CM7上のE:3度
- CM7上のB:7度
- CM7上のD:9度
- CM7上のA:13度
- CM7上のF:11度。ただし、3度Eとの同時使用では摩擦を管理する
11度は、メジャー7コード上で3度との間に短9度を形成しやすい。したがって、Fを単純に加えるのではなく、3度Eを省略する、Fを高音へ移す、あるいはサスペンションとして扱うなどの選択が必要になる。
テンションはコードネームの付属品ではない。各度数間の音程によって配置を決定する。
ジャズピアノのコード響きを比較する
クローズドヴォイシングとオープンヴォイシングを、同じ構成音で比較する。
例1:CM7
クローズド配置:
- C–E–G–B
- 度数:1–3–5–7
- 特徴:構成音の識別が容易。高音域では明瞭。低音域では密集しやすい。
ドロップ2配置:
- G–C–E–B
- 度数:5–1–3–7
- 特徴:音域が広がる。最低音が5度になるため、ルート感はベースとの関係に依存する。
ルートレス配置:
- E–B–D–A
- 度数:3–7–9–13
- 特徴:ベースがCを担当する場合に、メジャー機能とテンションを効率的に示す。
例2:G7
クローズド配置:
- G–B–D–F
- 度数:1–3–5–♭7
- 特徴:ドミナントの基本構造。ルートを含むため単独でも機能が明確。
テンションを加えた配置:
- G–B–F–A
- 度数:1–3–♭7–9
- 特徴:5度を省略し、9度を加える。低音域ではGとAの距離に注意する。
ルートレス配置:
- B–F–A–E
- 度数:3–♭7–9–13
- 特徴:ベースがGを担当する場合に有効。3度と7度のトライトーンを保持する。
オルタード配置:
- B–F–A♭–E♭
- 度数:3–♭7–♭9–♭13
- 特徴:テンションの摩擦が強い。CmまたはCメジャーへの解決方向を明確にする。
例3:Dm7
クローズド配置:
- D–F–A–C
- 度数:1–♭3–5–♭7
ルートレス配置:
- F–C–E–A
- 度数:♭3–♭7–9–5
オープン配置:
- A–D–F–C
- 度数:5–1–♭3–♭7
最後の配置では、最低音が5度のAになる。ベースがDを弾く場合、ピアノ側のルートを省略し、音域の分離を優先できる。
クローズドヴォイシングの練習方法
クローズドヴォイシング ピアノ 練習では、コードを単体で押さえるより、度数と進行を同時に扱う必要がある。
1. 4種類の7thコードを同じ根音で確認する
同じ根音Cから始める。
- CM7:1–3–5–7
- C7:1–3–5–♭7
- Cm7:1–♭3–5–♭7
- Cm7♭5:1–♭3–♭5–♭7
まず根音からの構造を確認する。次に転回形を練習する。転回形を覚える目的は、指の形を固定することではない。各声部の移動距離を減らすことである。
2. Ⅱ-Ⅴ-Ⅰを4つの調で移動する
最初から12調を高速で回す必要はない。以下を観察する。
- 3度から7度への移動
- 7度から次のコードの3度への半音進行
- 共通音の維持
- テンションを加えたときの音域
- 最低音の跳躍
Dm7–G7–CM7で確認した後、Fm7–B♭7–E♭M7、Gm7–C7–FM7などへ移動する。
ここでコード名を唱えるだけでは不十分である。各音を度数で言語化する。
- Ⅱの♭3がⅤの♭7へ残る
- Ⅱの♭7がⅤの3度へ半音下行する
- Ⅴの3度がⅠの3度または根音へ進む
このように度数で把握すると、調が変わっても構造が保持される。
3. 5度を省略してテンションを追加する
G7から5度Dを省略し、9度Aを加える。
- G–B–D–F
- G–B–F–A
次にルートを省略する。
- B–F–A–E
最後のEは13度である。G7におけるEは、メジャー6度とも表現できるが、ドミナントコード上では13度として読むほうが機能を明確にできる。
その後、♭9、♯9、♭5、♯5へ置き換える。テンションを変えるたびに、CM7またはCm7への解決を確認する。
オープンヴォイシングを練習する方法
オープンヴォイシング ピアノ 弾き方では、手を広げることよりも、音を分離する順序が重要である。
まず2声部に分ける
左手で低音、中音域で3度・7度、右手でテンションまたはメロディーを担当する。
たとえばG7であれば、次のように分ける。
- 左手:G、または省略
- 中音域:B–F
- 右手:A、E、またはオルタードテンション
この配置では、コード全体が一つの密集塊にならない。3度と7度を中音域に置き、テンションを右手へ移すことで、音の役割が分離する。
次にドロップ2を使う
クローズド配置を作り、上から2番目の音を1オクターブ下げる。移動後に低音域の間隔を確認する。ドロップによって最低音が低くなり、他の音との関係が濁る場合は、1オクターブ上へ移すか、構成音を省略する。
最後にボイシングを進行へ組み込む
単独のコードは、配置の完成度を判断する材料として弱い。必ず進行に置く。
- Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ
- Ⅰ-Ⅵ-Ⅱ-Ⅴ
- ブルース進行
- マイナーⅡ-Ⅴ-Ⅰ
- セカンダリードミナントを含む進行
同じオープン配置でも、次のコードへ大きく跳躍するなら、別の転回形を選ぶ。ヴォイシングはコード辞典ではなく、声部進行の設計図である。
代理コードとリハーモナイズでの配置
代理コードを使う場合、コードネームを置き換えるだけでは不十分である。代理後の3度・7度・テンションが、メロディーと衝突しないかを確認する。
G7の代理として、D♭7を考える。両者はトライトーンを共有する。
- G7:3度B、7度F
- D♭7:3度F、7度C♭
異名同音を考慮すれば、G7のBとFに対して、D♭7ではC♭とFが対応する。ベースがGからCへ進む直前にD♭7を置くと、半音進行を形成できる。しかし、D♭7の根音を低音で強調すれば、ベースラインとの関係が変わる。
ルートレスでD♭7を弾く場合、F、C♭、E♭、A♭などの構成が考えられる。ここでC♭をBとして扱うと、元のG7の3度と同音になる。音名の表記と機能上の度数を分けて読む必要がある。
リハーモナイズでは、オープンヴォイシングが声部の方向を明示しやすい。一方、クローズドヴォイシングは、代理後の構成音を近接させ、半音関係を強調しやすい。
代理コードで確認する項目
- 元のコードと代理コードが共有する音
- 3度と7度に相当する音
- メロディーとの音程
- ベース音との低音域の距離
- 解決先のコードトーン
- テンションがコード内でどの度数になるか
代理コードは、別のコードを鳴らす行為ではない。和声機能を維持したまま、声部進行と音域を再設計する行為である。
よくある配置上の誤り
すべての構成音を入れる
コードブックに書かれた音をすべて弾こうとすると、ピアノの音域が過密になる。特に、ルート、5度、7度、9度、13度を左手で処理すると、コードの機能より音数が目立つ。
コードの情報量は、構成音の数に比例しない。3度・7度・テンションが残っていれば、5度やルートを省略しても機能は保持できる。
高音域のクローズド配置を低音へ移す
高音域で成立した配置を、そのまま数オクターブ下へ移すと、音程の密度が問題になる。クローズドヴォイシングは、どの音域でも同じように機能するわけではない。
低音へ移す場合は、次のいずれかを行う。
- 構成音を減らす
- ルートをベースに任せる
- 3度と7度の位置を上げる
- オープン配置へ変換する
- 低音側の音程を完全5度や完全4度中心にする
オープンにすれば広がると考える
音を広げるだけでは、和声の中心が消えることがある。低音に5度やテンションだけを置き、3度と7度が高音へ離れすぎると、コードの機能が遅れて聞こえる。
広がりは、3度・7度を失わない範囲で作る。メロディーがある場合は、最上声との関係も含めて配置する。
テンションをコード名だけで選ぶ
G7に対して、9度を使うか♭9を使うかは、コード名だけでは決まらない。解決先がCメジャーかCマイナーか、メロディーがAかA♭か、前のコードに何が含まれているかで選択は変わる。
テンションは、度数、音程、解決方向の3点で判断する。
実用上の選択基準
ジャズピアノ コード 響き 比較を行う場合、次のように分類できる。
- 片手で速い進行を処理するなら、クローズドヴォイシングを基礎にする
- ベース付きでルートが重複するなら、ルートレス配置を使う
- 低音域の濁りが出るなら、音を減らすかオープンへ移す
- ソロピアノで旋律と低音を分離するなら、オープンヴォイシングを使う
- 4声の配置を広げたいなら、ドロップ2を使う
- 代理コードで半音進行を作るなら、3度・7度と解決先を先に決める
- テンションを増やす場合は、低音域へ密集させない
- 同じコードでも、進行の前後で転回形を変更する
この分類は、固定された規則ではない。編成、テンポ、音域、メロディー、ペダルによって変更される。単一の最適解を求めるのではなく、音域と度数の関係を再計算する。
代替可能なヴォイシングのパターン
最後に、実際の配置を選ぶための型をまとめる。これは暗記用のコード表ではない。各コードへ移植するための構造である。
1. ルート入りクローズド配置
- 1–3–5–7
- 1–3–♭7–9
- 1–♭3–5–♭7
- 1–♭3–♭5–♭7
コードの全体像を確認するために使う。低音域では音域を上げる。
2. 3度・7度中心のルートレス配置
- 3–7–9–13
- ♭3–♭7–9–5
- 3–♭7–9–13
- ♭3–♭7–♭9–♭13
ベース付きアンサンブルに適する。テンションの度数をコードごとに読み直す。
3. 5度を低音に置くドロップ2型
- 5–1–3–7
- 5–1–♭3–♭7
- 5–1–3–♭7
オープンな音域を作りやすい。最低音がコードの根音ではないため、ベースとの関係を確認する。
4. 左手低音と右手クローズド配置
- 左手:1度または5度
- 右手:3–7–9、3–♭7–9、♭3–♭7–11
ソロピアノとコンピングの中間に位置する。右手側をクローズドにすることで、テンションの形を維持しやすい。
5. 左手オープン、右手テンション配置
- 左手:1–5、または1–♭7
- 右手:3–7–9、♭3–♭7–9
- 最上声:メロディーまたは13度
音域を分離し、メロディーを保持する。低音と右手の間に不要な空白が生じる場合は、中音域の3度または7度を追加する。
結論
クローズドヴォイシングとオープンヴォイシングの違いは、コードの種類ではなく、構成音の音域差にある。クローズドヴォイシングは、度数と声部進行を把握しやすい。オープンヴォイシングは、音域を分離し、低音の濁りを回避しやすい。
実践では、クローズド配置を出発点にする。3度と7度を確認し、必要なテンションを加える。低音域で濁るなら、ルートまたは5度を省略する。音域を広げる必要があれば、ドロップ2やスプレッド配置へ移行する。
最終的に選ぶべきヴォイシングは、コードネームだけでは決まらない。ベース音、メロディー、前後のコード、テンションの度数、低音域の音程間隔によって決まる。
クローズドとオープンは対立概念ではない。クローズドで構造を確認し、オープンで配置を再設計する。その往復によって、ジャズピアノのコード進行は音符の集合から、機能を持つ声部の運動へ変わる。
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