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15 Best Piano Players of All Time

夕暮れのセッション・ルームに、88鍵の歴史を一度だけ俯瞰したくなる夜がある。9月初旬、業界メディアSingersroom.comが公開した「15 Best Piano Players of All Time」は、フランツ・リストやラフマニノフといったロマン派の巨星から、Art Tatum、Oscar Peterson、Herbie…

15 Best Piano Players of All Time

88鍵の地図が塗り変わる夜——Singersroom「歴代ピアノ15人」を鍵盤から読み直す

夕暮れのセッション・ルームに、88鍵の歴史を一度だけ俯瞰したくなる夜がある。9月初旬、業界メディアSingersroom.comが公開した「15 Best Piano Players of All Time」は、フランツ・リストやラフマニノフといったロマン派の巨星から、Art Tatum、Oscar Peterson、Herbie Hancockといったジャズ鍵盤の開拓者、エルトン・ジョンやビリー・ジョエル、スティーヴィー・ワンダーまで——ピアノという楽器の表現域を広げてきた15人の系譜を一覧化したものだ。ジャズピアノを日々叩いている立場から見ると、彼らのピアノとの向き合い方が明示されている点こそ、鍵盤を弾く者としてのヒントに満ちている。

「ピアノの表現力は、結局のところ"指と鍵盤の会話"の質で決まる」——そう断言できる15人が並んでいるのが、このリストの最大の価値だ。聴いて終わりではなく、自分の88鍵でなぞってこそ、彼らのDNAが自分の血肉になる。

エルトン・ジョンが証明した「コードの軽さが空気を生む」構造

リストで大きく紙幅を割かれているのがエルトン・ジョンだ。解説によれば、彼は幼少期からピアノを叩き込み、後にバーニー・トーピンとのコンビで膨大な数の名曲を残してきた。リスト内では"Your Song"のコード進行がエレガントでありながら過剰に飾らず、メロディの自然な流れを邪魔しない設計だと評されており、"Tiny Dancer"は静けさから壮大なコーラスへと広がる構成、"Rocket Man"は比較的シンプルな和声から壮大な空気を生み出す楽曲として紹介されている。"Bennie and the Jets"ではピアノが楽曲を引っ張る重いグルーヴを叩き出し、"Sorry Seems to Be the Hardest Word"ではメロディとピアノのセンシビリティが一体化する瞬間が描かれる。繊細なバラードからハードなリズムプレイまで、一台のピアノで自在に行き来できる稀有な鍵盤の魔術師だ。

ジャズプレイヤーがここから吸収すべきは、コード進行を派手にしない勇気だ。9thや13thを過剰に積み重ねなくても、シンプルな和声の連なりだけで空間のすべてが立ち上がる瞬間を作れるか——それを自分の鍵盤で確認する癖をつけてほしい。たとえばNord Grand 2のライト・タッチ・モードで弾けば、エルトンの那种"さらっとした重量感"に近づけられる感触がある。Yamaha CP88の「Standard Linear」カーブも、軽いタッチでも粒の揃う音色を選ぶと相性がいい。鍵盤の物理的なレスポンスと、コード進行そのものの"軽さ"の両軸で検証する価値がある。

ここで大事なのは、エルトンのコード進行が「シンプルだから薄っぺらい」のではなく、シンプルだからこそ一本一本の和声が耳に届き、結果として空気が立つ、という逆説である。たとえばCmaj7→F△7→Em7のようなテンション控えめな進行を鳴らしたうえで、左手でゴーストノートを刻む。これはジャズのウォーキングベースに通じるアプローチで、コード自体を飾りすぎない代わりにリズム側の情報量で空間を埋める戦略そのものだ。

ビリー・ジョエルから学ぶ「ピアノが語る」設計力

ビリー・ジョエルの"Piano Man"がsignature songとして位置づけられているのも、彼の特徴をよく表している。解説では彼の演奏スタイルを、バールームの語り部と緻密に訓練された作曲家の間を行き来するスタイルとして紹介している。彼はニューヨーク州ロングアイランドで育ち、幼少期からピアノを叩き込み、バールームの芸人肌と緻密に訓練された作曲家の顔を使い分ける稀有な音楽人生を歩んだ人物だ。

物語をピアノで支える力——コードを押さえるのではなく、音でいま何の場面を描いているかを意識する。歌詞のないジャズ・スタンダードを弾くときほど、この設計力がものを言う。8小節で一つの「場面」をつくる訓練——これをビリーのプレイは教えてくれる。ジャズ・アドリブのセオリーそのもので、コンパス一個一個にキャラクターを持たせるアプローチだ。

彼のプレイを研究するなら、自分の鍵盤で"Piano Man"の右手メロディを歌いながら左手でコード感を覚える、というシンプルな作業が効く。弾き語り形式だからこそ、コードとメロディが一体化する感覚が養われる。ピアノ一本でラウンジ・ミュージシャンの日常を切り取る設計力——これはギタリストやベーシストとアンサンブルする前に、ソロピアノでまず鍛えておくべき能力だ。ビリー・ジョエルの楽曲を片っ端から耳コピしてコード進行を可視化していく作業は、ジャズのソロピアノ即興に通じる基礎体力になる。

鍵盤で確かめる3つの練習

リストにはArt TatumやOscar Peterson、Herbie Hancockといったジャズ・イノベーターの名前が並ぶが、ソース内で具体的に掘り下げられているのはエルトンとビリーの2人だけ。残り13人の詳細は割愛されているのが正直なところだ。ここから一歩踏み込むなら、以下の三点を自宅で試してみてほしい。

まず一つめ——手持ちのステージピアノ(Nord、Kawai、Yamahaなど)のVelocity Sensitivity(鍵盤のタッチ感度)をいったんオフにし、均一な強さだけで"Tiny Dancer"のシンプルなアルペジオを弾いてみる。コード進行の骨格だけが音に残る。その骨組みを聴いたとき情景が浮かぶかどうか、それがジャズの実力に直結する体感テストだ。

二つめ——Velocity Sensitivityを元に戻して、今度は強弱を思い切りつけて同じアルペジオを弾く。同じコード進行が"歌"になる瞬間が指先に直接叩き込まれる。指の筋力に頼るのではなく、鍵盤が返してくる情報を"聴く"という基本動作の再確認になる。

三つめ——"Your Song"のコード進行を移調して弾いてみるのもいい。エルトンがコード進行そのもので空気を立ち上げる達人なら、Cキー以外の楽器——たとえばBbトランペットやアルトサックスのプレイヤーとセッションする——でも同じ"歌"を再現できるかを試せば、コード進行の普遍的な強さが可視化される。セッション現場で「移調はもう怖くない」状態を、88鍵の歴史から学ぶわけだ。

今夜一杯のあと、お気に入りの一台で88鍵の歴史をなぞってみようじゃないか。15人のプレイリストが、あなたの鍵盤の新しい扉を開くはずだ。

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