
通常のミクソリディアンスケールを8分音符で連続して弾くと、コードトーンの位置は開始音によって変わる。1度から始めれば3度や7度が表拍に来るが、2度から始めれば、表拍に非和声音が現れる。スケールの音自体が間違っているわけではない。それでも、下降ラインのなかでコードの輪郭を保ちたい場合、このずれは扱いにくい。
ビバップスケールは、そのずれを経過音で調整する。したがって、これは新しい音階というより、コードトーンとリズムの対応関係を固定するための構造と考えたほうが正確である。ジャズピアノの即興で音が散漫になるとき、問題はスケールの種類ではなく、強拍に何を置いているかにある。
7音ではコードトーンの位置がずれる
まず、7音スケールと8分音符の関係を確認したい。
G7に対してGミクソリディアンスケールを使う場合、構成音は次の通りである。
- 1度:G
- 2度:A
- 3度:B
- 4度:C
- 5度:D
- 6度:E
- ♭7度:F
G7の基本的なコードトーンは、1度、3度、5度、♭7度。音名ではG、B、D、Fである。
この音列を、Gから上行する8分音符として配置すると、次のようになる。
| 位置 | 1 | & | 2 | & | 3 | & | 4 | & |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 音 | G | A | B | C | D | E | F | G |
| 度数 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | ♭7 | 1 |
表拍にはG、B、D、F、つまり1度、3度、5度、♭7度が置かれる。ここだけを見ると問題はない。
しかし、次の小節をAから始めると配置が変わる。
| 位置 | 1 | & | 2 | & | 3 | & | 4 | & |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 音 | A | B | C | D | E | F | G | A |
| 度数 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | ♭7 | 1 | 2 |
表拍に来るのはA、C、E、G。G7に対する2度、4度、6度、1度であり、3度、5度、♭7度は裏拍へ移動する。音階を切れ目なく演奏すると、コード感を示す音が一定の位置に留まらない。
この現象は、7という音数と、1小節に置く8分音符8個の単位が一致していないことから生じる。音楽的な失敗ではないが、表拍にコードトーンをそろえたいときには制御しにくい。
そこで、ミクソリディアンスケールへ1音を加える。音数を8にすることで、8分音符8個の周期と音列の周期が一致する。これがビバップスケールの基本原理である。
ビバップスケールの本体は音階名ではない。コードトーンを表拍へ固定するための8音構造である。
ドミナント・ビバップスケールにおける経過音
ドミナント・ビバップスケールは、ミクソリディアンスケールの♭7度と1度の間に長7度を挿入する。
G7を例にすると、構成音は次の通りである。
G、A、B、C、D、E、F、F♯
度数では、1、2、3、4、5、6、♭7、7となる。
F♯はGに対する長7度であり、G7の基本的なコードトーンではない。FからGへ進むための半音の経過音として機能するため、F♯を独立した着地点として扱う必要はない。
上行形を8分音符で弾くと、配置はこうなる。
| 位置 | 1 | & | 2 | & | 3 | & | 4 | & |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 音 | G | A | B | C | D | E | F | F♯ |
| 度数 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | ♭7 | 7 |
この小節の表拍にはG、B、D、Fが並ぶ。G7の1度、3度、5度、♭7度である。最後のF♯は8分音符の裏拍に置かれ、次の表拍でGへ戻る直前の音になる。
ここで重要なのは、F♯の音名だけを見て判断しないことだ。F♯はG7のなかで常に不適切な音という意味ではない。短い音価でFからGへ進めば経過音として聴こえる。一方、表拍で強調したり、長く保持したりすれば、Gへ解決するドミナント上の緊張として聴こえる可能性がある。音の機能は、音名だけでなく拍位置、音価、前後の音によって決まる。
下降形での基本配置
ドミナント・ビバップスケールは、下降形で特に使いやすい。Gから始めて8分音符8個を下降させると、音列は次のようになる。
G、F♯、F、E、D、C、B、A
| 位置 | 1 | & | 2 | & | 3 | & | 4 | & |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 音 | G | F♯ | F | E | D | C | B | A |
| 度数 | 1 | 7 | ♭7 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 |
表拍に来るのはG、F、D、B。G7の1度、♭7度、5度、3度である。F♯はGとFの間に置かれた半音の経過音で、表拍のコードトーンを邪魔しない。
この下降形では、強拍にコードトーンが連続する。裏拍にはF♯、E、C、Aが置かれるが、すべてを同じ機能の音として考える必要はない。F♯は典型的な半音経過音であり、EやC、AはG7のスケール内にある補助的な音としてラインをつなぐ。実際の演奏では、どの音を短く通過し、どの音を次のコードへの準備として残すかを決める。
ただし、どの開始音から弾いても自動的にコードトーンが表拍へ来るわけではない。Aから下降すれば、音列は次のようになる。
A、G、F♯、F、E、D、C、B
この場合の表拍はA、F♯、E、Cであり、G7のコードトーンが表拍に並ぶ構造ではない。ビバップスケールは、開始音を選ぶことで初めてリズム上の効果を発揮する。
ドミナント・ビバップスケールの使い方
G7上で最初に固定する開始音は、1度、3度、5度、♭7度である。
- 1度Gから下降する
- 3度Bから下降する
- 5度Dから下降する
- ♭7度Fから下降する
それぞれの開始音から、音列を崩さずに下降させる。最初から音を飛ばしたり、複雑なリズムを加えたりしない。まずは8分音符8個を1単位として、表拍にコードトーンが並ぶ状態を耳と指に覚えさせる。
Gから下降する場合は、G—F♯—F—E—D—C—B—A。Bから下降する場合は、B—A—G—F♯—F—E—D—Cとなる。後者では表拍にB、G、F、Dが現れ、3度、1度、♭7度、5度が配置される。
この練習で大切なのは、音列を上から下まで弾き切ることではない。どの拍にコードトーンがあるかを聴き、表拍を意識したまま指を動かすことである。音階練習として指だけを走らせると、F♯のような経過音までコードトーンと同じ重さで鳴ってしまう。
メジャー・ビバップスケールは5度と6度を接続する
メジャー・ビバップスケールでは、5度と6度の間に♯5度、または表記上の♭6度を加える。Cを主音とする場合、通常のCメジャースケールは次の7音で構成される。
C、D、E、F、G、A、B
C6のコードトーンを1度、3度、5度、6度と考えるなら、対象となる音はC、E、G、Aである。ここへG♯を加える。
C、D、E、F、G、G♯、A、B
度数では、1、2、3、4、5、♯5、6、7となる。
上行形を8分音符で配置すると、表拍にはC、E、G、Aが来る。
| 位置 | 1 | & | 2 | & | 3 | & | 4 | & |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 音 | C | D | E | F | G | G♯ | A | B |
| 度数 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | ♯5 | 6 | 7 |
G♯はAへ進むための半音の経過音である。C6の基本的なコードトーンではないので、表拍で長く止める音としてではなく、GからAへ向かう接続音として扱う。
この音列では、GからAへ全音で進む代わりに、G—G♯—Aという半音を含む動きが作られる。音数が8になることで、C、E、G、Aが8分音符の表拍にそろう。
C6とCmaj7を区別する
ここで、メジャーコードの種類を曖昧にしてはいけない。Cメジャー上なら、いつでもC6型のビバップスケールを使えばよいという意味ではない。
Cmaj7の基本的なコードトーンはC、E、G、B。一方、C6ではC、E、G、Aが中心になる。同じCを基礎にしていても、表拍に置きたい音が異なる。
| コード | 中心となるコードトーン | 表拍にそろえたい音 |
|---|---|---|
| C6 | C、E、G、A | 1度、3度、5度、6度 |
| Cmaj7 | C、E、G、B | 1度、3度、5度、7度 |
C6型のメジャー・ビバップスケールでは、長7度Bは音列に含まれていても、表拍の中心には置かれない。Cmaj7の響きを明確にしたいなら、Bをどの拍に置くかを別に設計する必要がある。
この違いを無視して、すべてのメジャーコードへ同じ音列を適用すると、ラインの表拍と左手の和音が衝突する。コードネームだけでなく、実際に鳴っているボイシングの構成音を基準にすることが大切である。
下降形でのCメジャー・ビバップスケール
Cから下降させる場合、音列は次のようになる。
C、B、A、G♯、G、F、E、D
度数では1、7、6、♯5、5、4、3、2である。
| 位置 | 1 | & | 2 | & | 3 | & | 4 | & |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 音 | C | B | A | G♯ | G | F | E | D |
| 度数 | 1 | 7 | 6 | ♯5 | 5 | 4 | 3 | 2 |
表拍にはC、A、G、Eが来る。C6の1度、6度、5度、3度である。G♯はAとGの間に置かれ、下降ラインではAからGへ向かう途中の半音として機能する。
このG♯を単独の和声音として止めないことが重要だ。G♯をAへ進めるのか、Gへ解決させるのかによって、耳に届く方向性は変わる。経過音は、音列のなかで隣接するコードトーンとの関係を持って初めて機能する。
即興ラインは下降から構築する
ビバップスケールの練習が音階練習だけで終わる原因は、音の順番を崩す段階が早すぎることにある。ビバップスケールは、音の集合ではなく、音列全体がリズム構造を持っている。途中の音を抜けば、経過音の位置も、コードトーンの位置も変わる。
最初に行うべきなのは、下降ラインを固定することだ。
1小節単位の下降
G7上では、Gから次のように下降する。
G—F♯—F—E—D—C—B—A
C6上では、Cから次のように下降する。
C—B—A—G♯—G—F—E—D
ここでは音数とリズムを変更しない。テンポも過度に上げない。目的は指の速度ではなく、表拍にコードトーンが来ている状態を認識することである。
次に、開始音をコードトーンの間で変更する。G7ならG、B、D、F。C6ならC、E、G、Aである。各開始音から下降し、1小節の終端で次のコードへ接続する。
たとえば、G7の各コードトーンから8音を下降させると、次のようになる。
- Gから:G—F♯—F—E—D—C—B—A
- Bから:B—A—G—F♯—F—E—D—C
- Dから:D—C—B—A—G—F♯—F—E
- Fから:F—E—D—C—B—A—G—F♯
ここで注意したいのは、8個目の音である。Fから下降する場合、音列はF—E—D—C—B—A—G—F♯となる。8個目はGではなくF♯であり、次にGへ進むための経過音として小節の終端に置かれる。
つまり、Fから始めたときに「Gへ到達する」と説明するのは正確ではない。8分音符8個の範囲で到達するのはF♯で、次の拍または次の小節のGへ解決する。終端の音と、その次に向かう解決先を分けて考える必要がある。
2拍単位へ分割する
1小節の8音を一度に処理できない場合は、2拍ごとに分ける。
G7の下降形では、次の4音が基本単位になる。
G—F♯—F—E
表拍のGとFがコードトーンで、F♯はGからFへ移動する半音の経過音である。続くD—C—B—Aでは、DとBがコードトーンになる。
この2拍単位を反復してから、最後に1小節へ連結する。音階全体を一気に弾くより、表拍と裏拍の役割が明確になる。
C6では、C—B—A—G♯とG—F—E—Dに分ける。前半の表拍はCとA、後半はGとEである。C6のコードトーンが2拍ごとに配置されていることを耳で確認する。
音型を変える場合の制約
ビバップスケールは、音列を一切崩してはいけないという理論ではない。実際の即興では、反復、跳躍、休符、リズム変形が必要になる。ただし、どの段階で構造を崩したのかを把握しておく必要がある。
比較的扱いやすい変形は次の通りである。
1. 連続した4音を取り出して反復する。
2. 最初の音を休符に置き換える。
3. 最後のコードトーンを長く伸ばす。
4. 下降ラインの終端を3度または♭7度へ変更する。
5. 同じ音列を別のオクターブで反復する。
一方、経過音を表拍へ移動させる変形は、コード感を変える。G7上でF♯を表拍に置けば、それは単なる裏拍の経過音ではなく、Gへ解決するテンションとして強く聴こえる場合がある。
経過音は、音名だけで決まらない。拍位置、音価、前後の音、伴奏との関係で機能が変わる。
Ⅱ—Ⅴ—Ⅰでの接続
ビバップスケールは、単独のコード上よりも進行のなかで使ったときに構造が見えやすい。典型例のひとつが、Gマイナーへ向かうⅡ—Ⅴ—Ⅰである。
Gマイナーの基本的な進行を、次のように考える。
| 機能 | コード | 主要な度数 |
|---|---|---|
| Ⅱ | A半減七 | 1度、♭3度、♭5度、♭7度 |
| Ⅴ | D7 | 1度、3度、5度、♭7度 |
| Ⅰ | Gマイナー | 1度、♭3度、5度、6度または7度 |
D7にドミナント・ビバップスケールを適用すると、音列は次の通りになる。
D、E、F♯、G、A、B、C、C♯
C♯はD7の♭7度Cと1度Dの間に置かれる経過音である。
Dから下降する場合は、D—C♯—C—B—A—G—F♯—Eとなる。
| 位置 | 1 | & | 2 | & | 3 | & | 4 | & |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 音 | D | C♯ | C | B | A | G | F♯ | E |
| 度数 | 1 | 7 | ♭7 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 |
表拍にはD、C、A、F♯が配置される。D7の1度、♭7度、5度、3度である。
このラインの終端音Eについては、度数を正確に捉えたい。EはDを基準にすればD7の9度であり、13度ではない。D7の13度にあたる音はBである。また、Gを基準に見たEは、Gマイナーに対する6度、あるいはテンションとしての13度にあたるが、いずれにしてもD7の13度と説明することはできない。
EはD7の9度として、次のGマイナーへ向かう接続音や、ラインの開いた終端として扱える。Gマイナーの構成音へ明確に解決させたいなら、EからF、またはGへ進める方法もある。Eをそのまま残す場合は、Gマイナーの基本的なコードトーンへ解決したのではなく、D7の9度が次の和音へ持ち越された状態として聴かせる、と考えるほうが正確である。
より強い解決を作るなら、D7の3度F♯を使う。F♯からGへは半音上行で進むため、Gマイナーの主音へ自然に収束する。一方、F♯からGマイナーの3度B♭へ進む場合、両音の間隔は4半音である。音名上はFからBまでの4度なので、厳密には減4度。平均律上の響きは長3度と同じだが、機能としては半音進行ではなく、跳躍として扱うべきである。
この違いは小さく見えるが、ラインの設計では重要になる。F♯→Gは半音による導音的な解決、F♯→B♭は跳躍によるGマイナーの3度への着地である。二つを同じ種類の連結として説明すると、実際に弾いたときの方向感が曖昧になる。
ⅤからⅠへ向かう着地点
ジャズのアドリブでは、Ⅴのコードで何を弾くかだけでなく、Ⅰへ何を残すかが重要になる。D7からGマイナーへ進む場合、候補となる接続は次の通りである。
- D7の3度F♯からGマイナーの主音Gへ半音上行する
- D7の3度F♯からGマイナーの3度B♭へ跳躍する
- D7の♭7度CからGマイナーの5度Dへ全音上行する
- D7の5度AからGマイナーの♭3度B♭へ半音上行する
- D7の1度Dを維持し、Gマイナーの5度として再解釈する
CからDへの動きを、二度下行と考えてはいけない。CからDは通常、上行の全音であり、度数では長2度。Gマイナーの5度Dへ進む場合、C→Dは全音上行である。
反対に、CからB♭へ進むなら、これは半音ではない。CからB♭は2半音、つまり全音の下行である。C→B♭を半音下行と呼ぶと、ラインの音程関係を誤って理解することになる。
また、F♯→B♭→Gという音列も、半音と半音をつないだ動きではない。F♯からB♭は4半音の跳躍、B♭からGは3半音の下行、すなわち短3度の下行である。B♭からGは半音ではなく、短3度による下降だ。
この音列を使うなら、F♯→B♭を跳躍、B♭→Gを短3度の下行として聴き分ける必要がある。その後、GからさらにFやEへ進めれば、Gマイナーのなかで下降ラインを続けられる。音程を正しく把握すると、フレーズの力点も変わる。
左手ボイシングとの関係
右手のビバップスケールが明確でも、左手のボイシングが不適切であれば、音の機能は曖昧になる。特にルートレス・ボイシングでは、右手のコードトーンと左手のテンションが近接する。
G7のルートレス・ボイシングでは、3度B、♭7度F、9度A、13度Eなどを配置できる。この上で右手がF♯を経過音として通過すると、左手のFとの半音関係が生じる。これは構造上の誤りではない。F♯が短い音価でFまたはGへ進めば、ドミナントの緊張として処理できる。
ただし、右手のF♯を長く保持すると、左手のFと同時に鳴り続ける。その結果、F♯は経過音ではなく、♭7度と長7度が同時に鳴る複合的な響きになる。意図していないなら、音価を短くするか、解決先のGを早く示したい。
C6の左手では、1度C、3度E、6度A、9度Dなどを含むボイシングが考えられる。右手のG♯は、左手のGやAとの関係で聴こえ方が変わる。G♯をAへ進めれば上行経過音、AからGへ下降する途中で通過させれば半音による接続音として働く。
右手だけでスケール練習を完結させないことだ。左手のコードを保持し、表拍のコードトーンと裏拍の経過音がどのように分離されるかを確認する。コードトーンが強拍に現れていても、左手のボイシングが密集していれば、聴き手には経過音の機能が届きにくい。
ビバップスケールのピアノ練習法
ビバップスケールのピアノ練習法では、音階を速く弾くことを第一目標にしない。音、拍、度数を分けて処理し、最後にそれらを同時に聴く。
1. コードトーンを単独で弾く
最初はスケールを弾かず、コードトーンだけを表拍へ置く。
G7ならG、B、D、F。C6ならC、E、G、A。メトロノームに合わせ、4分音符または2分音符で確認する。
ここで音が不安定なら、経過音を加えても機能しない。コードトーンの位置が曖昧なままでは、ビバップスケールが単なる音の列になる。
2. 経過音を裏拍へ追加する
次に、コードトーンの間へ経過音を入れる。
G7では、FとGの間にF♯を置く。C6では、GとAの間にG♯を置く。音列全体を覚える前に、経過音がどの2音を接続しているかを確認する。
この段階では音価を均等にする。経過音だけをアクセントで強調しない。表拍のコードトーンを明確にし、裏拍の経過音を短く処理する。
ただし、「経過音は必ず裏拍でなければならない」という意味ではない。ビバップスケールの基本形では、コードトーンを表拍に置くため、追加した音が裏拍に来る。その配置を意図的に変えれば、経過音は別のテンションやアプローチ音として聴こえる。まず基本配置を身につけ、その後で位置を変える。
3. 下降ラインを8分音符で固定する
テンポを上げず、1小節8音の単位で反復する。
- G7:G—F♯—F—E—D—C—B—A
- C6:C—B—A—G♯—G—F—E—D
右手の運指は、音列を途切れさせないものを選ぶ。特定の運指を絶対化する必要はない。重要なのは、経過音で手が止まらないこと、表拍のコードトーンに不自然なアクセントが付かないことである。
4. 開始音をコードトーン間で移動する
G7ならG、B、D、F。C6ならC、E、G、A。この4音を開始音として、同じ音列を下降させる。
開始音が変わると、表拍に現れる音も変わる。したがって、開始音を単に指の練習として変えるのではなく、どのコードトーンを1拍目に置きたいのかを決める。
また、終端音も必ず確認する。Fから下降する8音はF—E—D—C—B—A—G—F♯であり、Gへ到達するのは9音目以降である。F♯を小節終端に置いたあと、次の表拍でGへ解決すれば、音列の周期とフレーズの方向が一致する。
5. Ⅱ—Ⅴ—Ⅰで解決先を指定する
Gマイナーへ進むD7では、D7の3度F♯からGへ半音上行させるラインをまず練習する。次に、F♯からB♭へ跳躍し、B♭からGへ短3度下行する形を試す。
このとき、F♯→B♭を半音進行として処理しない。F♯からB♭は4半音の跳躍であり、B♭→Gは3半音の短3度下行である。音程の種類を分けて聴くことで、フレーズのアクセントが明確になる。
CからB♭へ進む場合も同様だ。C→B♭は全音下行であり、半音下行ではない。CからDへ進む場合は全音上行である。こうした基本的な音程を正確に把握することが、コード進行に沿ったラインを作る土台になる。
6. リズムを変える
音列が固定された後で、ようやくリズムを変える。
最初に行う変形は、次のようなものが扱いやすい。
- 8分音符4個のあとに休符を置く
- 4分音符1個と8分音符4個を組み合わせる
- 最後のコードトーンを長く伸ばす
- 3連符で終端の着地点へ近づく
ただし、リズムを変えた時点で、表拍のコードトーン配置も変化する。元のビバップスケールと同じ効果が、そのまま残るとは限らない。リズム変形後は、各拍の度数を再確認する必要がある。
7. 既存フレーズへ組み込む
最後に、短いジャズフレーズへ音列を組み込む。2拍または1小節の断片で十分であり、長いフレーズを最初から暗記する必要はない。
耳で採ったフレーズを使う場合も、音名だけを書き写さない。次の点を抽出する。
- どのコードの上で使われているか
- 開始音は何度か
- 表拍には何度の音があるか
- 経過音はどこに置かれているか
- 終端音は次のコードの何度へ進むか
- 連結は半音、全音、跳躍のどれで成立しているか
フレーズを度数と接続方法へ変換すれば、別のキーへ移調できる。これが耳コピーとコード理論の接続点である。
ビバップスケールと他のスケールを混同しない
ビバップスケールは、ブルーノート・スケールや通常のモードとは目的が異なる。
ブルーノート・スケールは、♭3度、♯4度または♭5度、♭7度などを含み、主にブルースの音程関係を形作る。一方、ビバップスケールは、8分音符の周期とコードトーンの拍位置を整えるための音列である。
通常のドリアン、ミクソリディアン、メジャースケールは、7音の集合として和声の範囲を示す。ビバップスケールは、そこへ経過音を加え、特定のリズム上でコードトーンを配置する。
| 種類 | 主な目的 | 追加音・経過音の役割 | 典型的な使用 |
|---|---|---|---|
| ミクソリディアン | ドミナントの基本音列を示す | 必須ではない | 7音による旋律構築 |
| ドミナント・ビバップ | 8分音符上でコードトーンを表拍へ置く | ♭7度と1度の間の長7度 | 下降ライン、連続8分音符 |
| メジャー・ビバップ | 6度を含むメジャー和音の表拍配置 | 5度と6度の間の♯5度 | メジャーコード上の下降ライン |
| ブルーノート・スケール | ブルース固有の音程関係を作る | 音階の性格を作る音 | ブルース系フレーズ |
| ドリアン | マイナーコードの基本的な度数を示す | 必須ではない | マイナーⅡ、モーダルな進行 |
経過音を増やすこと自体には価値がない。追加した音が、どの拍に置かれ、どのコードトーンへ向かい、次の和音の何度へ解決するのかが問題になる。
「ビバップスケール」という名称の成立
「ビバップスケール」という名称は、チャーリー・パーカーやディジー・ガレスピーが、当時この名称を使って体系的に作曲していたことを意味しない。
この概念は、後世のジャズ教育のなかで、ビバップの旋律に見られる経過音とコードトーンの配置を練習可能な音階として整理したものだ。デイヴィッド・ベイカーらの教育体系によって広く知られるようになったが、理論上の名称と、当時の演奏家が実際にどのような意識でラインを作っていたかは分けて考える必要がある。
パーカーやガレスピーのラインを、本人たちがビバップスケールという名称で設計していたと断定することはできない。演奏には、クロマチック・アプローチ、囲い込み、コードトーンの跳躍、リズムのずれ、フレーズの反復など、複数の技法が同時に含まれる。
ビバップスケールは、過去の演奏を完全に説明する唯一の原理ではない。複雑なラインの一部を、表拍のコードトーンと裏拍の経過音という視点から整理するためのモデルである。
理論が便利だからといって、演奏のすべてを理論へ押し込める必要はない。理論はラインを聴き直し、移調し、練習の単位へ分解するために使う。演奏そのものを理論の実演に変えてしまうと、ビバップらしいリズムの揺れや、意図的な拍のずれを失う。
ボイシングとラインを組み合わせる
最後に、ビバップスケールを実際の伴奏と組み合わせる方法を整理する。
G7での基本形
左手に3度Bと♭7度Fを置き、右手でG7のドミナント・ビバップスケールを使う。
- 右手の表拍:G、B、D、F
- 主な経過音:F♯
- 補助的な音:A、C、E
- 解決先:G、B、または次のコードの構成音
ルートを左手で弾く場合、低音域でGを重ねすぎると響きが濁ることがある。ルートレス・ボイシングでは、左手の3度と♭7度を中心にし、右手の1度や3度を表拍へ置くと、ラインの機能が明瞭になる。
C6での基本形
左手にEとA、またはCとAを置き、右手でCメジャー・ビバップスケールを使用する。
- 右手の表拍:C、E、G、A
- 主な経過音:G♯
- 補助的な音:B、D、F
- 主な終端:C、E、A
Cmaj7のボイシングを使用する場合は、AとBの扱いを明確にする。C6型の表拍配置を保ちたいのか、Cmaj7の7度Bを表拍へ置きたいのかによって、ラインの設計は変わる。
Ⅱ—Ⅴ—Ⅰでの接続形
Aマイナーへ向かうⅡ—Ⅴ—Ⅰで、E7からAマイナーへの接続を考える。
E7のドミナント・ビバップスケールは、E、F♯、G♯、A、B、C♯、D、D♯。D♯はE7の♭7度Dと1度Eの間に置かれる経過音である。
下降形はE—D♯—D—C♯—B—A—G♯—F♯となる。表拍にはE、D、B、G♯が来る。E7の1度、♭7度、5度、3度である。終端のG♯は、Aマイナーの主音Aへ半音上行で進められる。
ここでD♯とG♯を混同しないことが大切だ。D♯はE7内部の経過音、G♯はE7の3度であり、Aマイナーの主音へ向かう導音でもある。同じ半音進行に関わっていても、コード内での度数上の役割は異なる。
跳躍を含む連結の処理
ビバップのフレーズは、半音と全音の連結だけで成立するわけではない。D7からGマイナーへ進むときのF♯→B♭のように、跳躍を含むラインも使われる。
この連結を扱うときは、次の点を分けて確認する。
1. 跳躍の直前と直後の音を、度数で確認する。
2. 直前の音がⅤのコードトーン、直後の音がⅠのコードトーンかを確認する。
3. 跳躍を、半音進行とは別のリズム上のイベントとして配置する。
4. 跳躍の後に半音または全音の動きを加え、主音やコードトーンへ収束させる。
F♯→B♭では、F♯からB♭までが4半音の跳躍になる。音名の綴りを基準にすれば減4度で、平均律上は長3度と同じ響きだが、機能としては隣接音による進行ではない。その後のB♭→Gは3半音の短3度下行である。ここを半音と説明することはできない。
たとえばF♯→B♭→Gというラインでは、最初に跳躍でGマイナーの3度へ着地し、その後、短3度下行で主音Gへ戻る。この構造を意識すれば、D7の緊張からGマイナーへの解決を、単純な半音下降とは違う輪郭で作れる。
ビバップスケールを実戦で使うには、まず8音の周期を崩さず、次に開始音と終端音を変える。その後でリズムを変え、最後に音の順序を変える。この順序を逆にすると、経過音の位置とコードトーンの位置が不明確になる。
ビバップスケールは、即興を自動化する装置ではない。表拍のコードトーン、裏拍に置かれた経過音、次の和音への解決。この三つを同時に管理するための分析単位である。
G7なら、1度、3度、5度、♭7度を表拍へ置き、♭7度と1度の間を長7度で接続する。C6なら、1度、3度、5度、6度を表拍へ置き、5度と6度の間を♯5度で接続する。
最後に残る作業は、音列を異なる開始音、異なる終端、異なるコード進行へ移すことだ。D7からGマイナーへ進むなら、F♯からGへの半音上行、F♯からB♭への跳躍、CからDへの全音上行、CからB♭への全音下行を、それぞれ別の接続として聴き分ける。
即興演奏の安定性は、音数では決まらない。どの度数を、どの拍に置き、次の和音のどの音へ進めるか。その一致が、ビバップスケールを単なる上下運動から、ジャズピアノで使えるラインへ変えていく。
Related reading: ビバップスケール習得のコツ:ジャズピアノのフレーズを滑らかにつなぐ8音の練習法 and ジャズピアノのアドリブ習得:スケール理論優先派と耳コピ推奨派の最適解.