
秋が少しずつ深まってきたこの頃、公益財団法人アクロス福岡が、2026年10月3日(土)・4日(日)の二日間、「アクロス・クラシックふぇすた2026」を開催すると発表しました。2007年に「たくさんの人にクラシック音楽を身近に親しんでほしい」という思いから始まったこのお祭りも、今回で20回目の節目を迎えるとのこと。「聴く」だけでなく、楽器を「見て・触れて・体験する」を大切にしてきたこのフェスは、ジャズピアノを弾く私たちの耳にも、ちゃんと栄養を運んでくれる二日間になりそうです。
オーケストラと吹奏楽の「ボイシング」を体感する二日間
今回のメインは、二つの有料コンサートです。10月3日(土)14時開演のコンサートシリーズAには九州交響楽団が登場し、中井章徳さんの指揮で「名探偵・勇者・英雄たちの物語」をテーマに、「名探偵コナン メインテーマ」のスペシャル・メドレー、「荒野の七人」、「ドラゴンクエスト 序曲X」、「シンフォニック・マンボ No.5」などが演奏されます。「はじめてオーケストラを聴く方にもぴったりのコンサート」と紹介されているとおり、肩ひじ張らずに入れるラインナップです。
10月4日(日)14時開演のコンサートシリーズBは、アクロス・ポップス・ウインドオーケストラ。指揮はオリタ・ノボタ(織田浩司)さん、サクソフォンに福井健太さん、トロンボーンに小田桐寛之さん、ホルンに日高剛さんを迎え、「ルパン三世のテーマ」「勇気100%」「Tears of Moon」「Fun,Fun,Fantastico!」など、世代を問わず口ずさめる楽曲が並びます。公募で選ばれたアマチュアの吹奏楽奏者たちが、国内屈指の奏者たちと共演する、というのも胸がほっこりしますね。
私たちジャズピアノ奏者にとって、こうしたコンサートは実はとても贅沢な「響きのお手本」です。コードの中の一音が、弦楽器・パーカッション・管楽器と、どんなふうに分担されてホールに広がっていくのか。譜面を開かなくても、耳と体でボイシングの立体感をそのまま受け取れる時間は、そう多くありません。あなたがコード進行に詰まったとき、左手のルートだけだった和音がどんな可能性を持っているか、そのヒントがきっと見えてきますよ。
聴くだけで終わらない、触れる・見る・歩く体験
このお祭りの一番の魅力は、聴くだけで終わらないところです。1F円形ホールでは「フレンドリーコンサート」が無料・計9回公演で行われ、ラドヴァン・ヴラトコヴィチさんやルーク・ベイカーさん、木村睦美さん、佐々木悠子さん(ホルン)、神保佳祐さん、林田祐和さん(サクソフォン)、ブライアン・ルーさん、橋本和樹さん(ヴィオラ)、山内豊瑞さん(フルート)、山本楓さん(オーボエ)、マルコス・ペレス・ミランダさん(クラリネット)、ピアノ・歌・絵画が一緒になった「アートムジカ」など、たくさんの奏者が息づかいまで届けてくれます。定員100名・各回入替制・先着順という小ささも、嬉しいですね。
B2Fのイベントホールと2F交流ギャラリーでは「パフォーマンスライブ」が無料・計19回公演予定。ヴラトコヴィチさんのホルン、若狭和良さんのトロンボーン、古本大志さんのテューバ、岡田香織さん、坂本早百合さんのヴァイオリン、そしてスズキ・メソード福岡など、近くで音が作られる瞬間に出会えます。
さらに「楽器ふぇすた」では、木管・金管・弦楽器の展示・試奏・即売会、B2Fには音楽学校案内コーナー、2Fには弦楽器の展示ブースが並びます。「ヴァイオリン体験レッスン」は一流の講師が構え方から丁寧に教えてくれるそうで、お子さんと一緒に、私たち大人も触れてみたいですよね。シンフォニーホールの裏側をガイド付きで巡れる「バックステージツアー」も無料。ホールがどんな「呼吸」で音を育てているのかを、自分の目で確かめるチャンスです。
私たちジャズ奏者にとって、普段あまり触ることのない木管や金管の息の pressure を間近で感じること、弦楽器の弓が弦を舐めるように走る感覚を体感することは、指先のニュアンスを変えるきっかけになりますよ。コードの中のたった一音にも、こんなに表情があるのかと、驚いてもらえるはずです。
まずは一公演だけ、予定に入れてみてください
私がこういう「クラシックの催し」に足を運ぶとき、いつもテンポの遅いバルのフレーズを耳で追いながら、こっそりとジャズピアノの置き換えを想像してしまいます。例えばあの「ドラゴンクエスト 序曲X」の上行するオーケストラの響き、右手でメロディを弾きながら左手でルートとテンションをどう動かすか、なんてね。そういう「盗み聞き」が、実は上達の近道だったりします。
チケットは各公演1,500円、A・Bセット券2,000円、全席自由、未就学児入場OK、小学生以下はチケット不要という、なんとも懐に優しい設計です。
クラシックを普段あまり聴かない、という方も、大丈夫です。最初から全部を分かろうとしなくていいんです。まずは一公演だけ、席に座ってみてください。指の腹で鍵盤を叩く「強さ」だけではなく、ホールいっぱいに広がる「余韻」を感じること。それが、あなたの左手と和音を、またひとつ自由にしてくれるはずです。
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